今月のコラムは
♦♦ サステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム
♦♦♦  工藤尚悟助教です

阿仁鉱山と馬肉

私の出身地であり研究フィールドでもある秋田県には江戸時代に産銅日本一だった阿仁銅山があった。鉱山があった阿仁地区には今でも独特の文化がいくつか残っているが、中でも特徴的なのが馬肉食だ。坑道のなかで採掘作業をしていると粉塵を吸い込んでしまい、これらが肺に入り込んで「けはい(珪肺)病」になる。このけはい病に効くと信じられていたのが、馬肉である。阿仁地区には、馬の肉やホルモンをショウガなどと一緒にやわらかく煮込んだ「なんこ鍋」という料理がある。けはい病で苦しみ動けなくなった鉱夫が、近くで放牧されていた馬が沢に落ちて死んでしまったときに、その馬の肉を食べてみたところ症状が回復して元気になったことから馬肉料理が広まったと言われている。「なんこ」は南向のことで、方角上の南(つまり午)の意味。ところで、馬はあの世とこの世の両方を認識することができると考えられていた。そのため、綱を引く主人が黄昏時に薄暗くなった道で誤ってあの世の入口である結界に踏み込んでしまいそうになったとき、自らの身を投げて主人を助けたという話がある。そのような話があった場所には、身を投げた馬を供養する碑が立っていることが多い。馬は元来神秘的な力を持つ動物として認識されていたので、鉱夫という短命な者が馬肉を食べて滋養をつけようとしたという意味もあったのではないかと思う。秋田内陸縦貫鉄道の阿仁合駅で下車すると、駅舎のなかにある食堂に「馬肉ラーメン」のメニューがあり、昔懐かしい感じの醤油ラーメンになんこ鍋の馬肉がのって出てくる。内陸縦貫鉄道は4月末にカタクリの花の群生が見られることでも有名なので、秋田にお越しの際にはぜひ足を運んでみてほしい。

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