創域会 東京大学大学院新領域創成科学研究科

◇    4月のリレーコラムは自然環境学専攻
◇◇     佐々木夏来 助教です
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今年の3月は例年よりも暖かかったようで、桜の開花が早く、4月に入るころには葉桜となってしまいましたね。春の自然の変化はとても速く、みなさんも、お花見のスケジュールを立てるのに苦労した経験があるのではないでしょうか。山地の湿原を研究している私は、この時期になると研究計画を練りながら少し落ち着かない日々です。草が生える前の残雪期に調査を予定していたら、思いのほか雪解けが早くてタイミングを逃してしまったり、逆に雪が多すぎて目的地までの道が通れなかったりと、なかなか思い通りにならないのが春の調査です。
ソメイヨシノが散った後、木々が次々と葉を広げるこの時期が、私は一番好きです。柏の葉公園の木々の様子は日々変化し、研究室の窓から柔らかな緑の景色を眺めることが私のささやかな楽しみとなっています。小説家、徳冨蘆花は『自然と人生』の中の「雑木林」という随筆で「淡褐、淡緑、淡紅、淡紫、嫩黄(どんこう)など和(やわら)かなる色の限りを尽くせる新芽をつくる時は、何ぞ独り桜花に狂せむや。」と春の雑木林のモザイク的な色彩を称賛しています。カナメモチやイロハカエデなどの若葉は赤っぽい色をしており,これはアントシアニンという色素が過剰な光から幼葉を守っているためと言われています。そして、少し白っぽく見える樹木には、新芽が産毛で覆われているものもあります。遠くから色彩を眺め、近くで観察し…春の野には色々な感動と驚きがあると思います。暖かな春の陽気の中、散歩に出かけて身近な自然を楽しんではいかがでしょうか。また、自然環境学専攻では、サイバーフォレスト(http://landscape.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/cyberforest/Welcome.html)という研究プロジェクトの一環で、山の風景を定点観測して芽吹き時期の変化を環境教育の題材にもしています。こちらのホームページもどうぞご覧ください。

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