🐤 5月のコラム
🐤🐤 社会文化環境学専攻
🐤🐤🐤 福永真弓准教授

野鳥とアプリ

 流域環境デザインスタジオという演習授業を毎年おこなっている。昨年までは柏の葉キャンパス周辺の水循環を題材にしていたので、少し空き時間が出来たときには、キャンパス周辺を歩き回り、マンホールと側溝をたどったり、宅地や道路開発が進むエリアで暗渠化する水路をたどったりしていた。
 便利な世の中になったもので、途中で出会う植物や鳥がなにものかは、アプリを使えばだいたいわかる。こんぶくろ池で行きあった、大砲のようなカメラを抱えた野鳥愛好家から教わったのは、鳥の声を聞かせればなんの鳥かわかる優れものアプリだ。とはいえ、狙ったとおりのタイミングで鳥が鳴いてくれるわけではない。わたしは不器用なので、声がし始めたらすぐにアプリを瞬時に開くことなどできない。もたもたしていると、警戒した野鳥は黙り込んだまま、もしくはとっくに移動してしまい、聞こえるのは葉ずれの音ばかりとなる。
 思案して試すこといろいろ、たどりついたのは「出待ち方式」である。鳥がいるかもしれない、来るかもしれないあたりでしゃがみ込む。このとき、風景に溶け込むべく、無になるのがおすすめだ。瞑想は野鳥観察にも向いている。次の日の筋肉痛のことを考えると、中腰ではなく、いさぎよくお尻を地面につけてしまった方が良い。体幹を鍛えて鳥を待つ愛好家もいるが、わたしはその境地にはいたらないなんちゃって鳥好きなので、そこまではしない。ただし、座り込むときに備えて、ポケットにゴミ袋は常備している。地面というものは乾いていそうでも水分を含んでいる。長く座っているとじわっと水分がしみて悲しいお尻になるので要注意だ。
 良さそうな場所を見つけたら、座り込んでアプリを起動する。この方法だと意外に野鳥は鳴いてくれる。
 最近の驚きはヒヨドリ。シジュウカラかと思いきや、ヒヨドリだったことがここのところ続き、意外とバラエティ豊かにさえずっている。まんべんなく実を食べて種を運び、花に顔を突っ込んで花粉を運び、どこでもせっせと植物に奉仕している。実は日本ではよく見られるけれど、生息域が日本から東南アジアにかけての比較的狭い範囲ということもあり、海外の野鳥好きがわざわざ探しに来る鳥でもある。ちなみに、とても美味しい鳥で、ミカンを食べたヒヨドリをことさらに狙う強者もいる。肉の香りが良いのだそうだ。ただし、美味しそう、と思っていると、不思議なもので、上手に息を殺していても鳥は現れてくれなくなる。ささやかな食い気も察知されるらしいので、ご注意を。

 

ヒヨドリはとても食いしん坊。どこで見ているのか、ベランダに果物を置くとすぐに集まってきます。仲間同士で「あるよーっ」と鳴いて教え合うのでしょうか。(写真は事務局撮影)

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