♦♦ 複雑理工学専攻
♦♦♦  佐藤直木助教
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超光速航法を実現する理論の進展

スターウォーズの世界では宇宙船で遠い惑星系までひとっ飛びで行ってしまう。これは映画の世界でしか登場しない夢の技術と考えている人が多いのではないだろうか。近年、この夢の技術を実現する「超光速移動」の理論に大きな進展があった。

そもそも、アインシュタインの構築した一般相対性理論によると、物質の速度は光の速度を超えることはできない。光速が最高速度となると到達可能な惑星は大きく制限され、太陽の次に近い恒星のアルファセンタウリですら4.37光年離れている。つまり、あらゆる惑星系へ行きたいと思ったら光の速度を超える速度での移動、つまり超光速移動が必要になるのだ。一般相対性理論の範囲内で超光速移動を実現しようとすると、①ワームホールと②ワープドライブの二つの方法が主に考えられる。ワームホールとは、空間そのものを曲げて穴を開けることで、通常であれば遠い2地点をつなぐ方法である。ワープドライブとは、時空間のバブルを作り、そのバブルの中に物質を入れて移動させる方法である。空間であるバブルは光速を超えられないという制限を受けないため超光速移動が可能になる。このワープドライブは、理論解を最初に発見したAlcubierre博士の名前を取ってAlcubierre driveと呼ばれている。

これまでに発見されていた理論解では、二つの超光速航法はどちらも宇宙に存在するエネルギー全てに当たる膨大な「負」のエネルギーが必要となる(負のエネルギーが存在すると、リンゴが木から落ちずに地面から木に戻る)。この負のエネルギーはカシミール効果という非常に特別な場合でのみしか発見されておらず、現実世界で大量の負のエネルギーを得るのは難しく、超光速移動を実現するのは理論上もほぼ不可能と考えられていた。しかし、近年、ワープドライブの理論解が新たに発見された。その新たな理論解では、正のエネルギー、かつ太陽1つ分程度のエネルギーでワープドライブを実現することができる。大量の負のエネルギーが必要という一つの障壁を超えたのだ。

異なる惑星系への到達はまだまだ遠い未来ではあるものの、理論の世界では着実に一歩一歩実現に向けて研究が進んでいる。そして、この超光速移動の実現はゆくゆくはタイムトラベルの実現へとつながる夢のある話でもあることを最後に付け加えておきたい。

⇐ 2021年8月のコラム