◆◆  人間環境学専攻
◆◆◆  蜂須賀 知理 助教
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運動会

青く高い秋空に抜ける歓声。
ここ数週間、近くの小中学校から爽やかな声が聞こえてきていた。近年、温暖化による夏場の気温上昇などを理由として、春に運動会が行われることが多くなってきている。しかし、私自身の幼少期の記憶は「秋の大運動会」にある。
大の苦手だった徒競走、時に息を呑むほどの感動を生む団体演技、夏休みを返上して練習に取り組んだ鼓笛隊のマーチングドリル、そして何より楽しみなお弁当。これらの記憶がその当時の感情と共に蘇る。私自身が持つ一番古い運動会の記憶を辿ると、それはまだ園児だった頃の徒競走の場面にさかのぼる。当時、徒競走の何たるかを理解していなかった私は、行進か何かと勘違いしていたらしく、「よーい、ドン」でスタートを切った後、競争相手の後ろにぴったりとくっついて、「もっと早く行ってよぉ」と後ろから急かしていたのを思い出す。追い越せばよかったのに・・・なんとも間の抜けた子供であった。
そんな間の抜けた過去を封印し、先日は親として我が子の運動会に参加してきた。最近は雨天でも決行可能なよう近隣の体育館を借りての開催が多いようで、客席から青く高い秋空は見えなかったが、運動会のあの独特な雰囲気はしっかりと味わうことができた。まだ園児の我が子の運動会はお昼まででお開きであったが、近い将来、早朝からお弁当を用意して「朝から大変!」と言いながら、一日がかりで運動会に参加するのが楽しみである。
親子競技に本気で参加し、翌日筋肉痛になるというお決まりのパターンもやぶさかならず、家族や友達と一致団結する、その熱量に火照った頬を爽やかな秋風が鎮めてくれる―。やはり運動会は秋の開催がいいなぁと勝手ながら思いつつ、現在の運動会の形態に多少なりとも影響を及ぼしているであろう、地球温暖化、少子高齢化、異常気象、男女共同参画など肌身で感じている自然・社会環境の変化を今一度振り返り、子供達世代にどのようなバトンを渡せば良いものかと思いを馳せる令和元年 秋の夜長である。

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