♦♦  先端生命科学専攻
♦♦♦   鈴木雅京准教授

 ここ柏キャンパスは、ロードバイカーにとって好都合な場所にある。柏の葉公園通り沿いに進み、大堀川手前を左折すれば手賀沼まで続くサイクリングロードがある。手賀沼の少し先には利根川があり、利根川沿いにもサイクリングロードがある。利根川から北浦沿いに走れば、霞ヶ浦を1周するサイクリングロードにも出られる。私のお気に入りのコースだ。

   大学の教員というものは、暇さえあれば仕事をしてしまう。なぜなら、平日は雑務に追われ、肝心な研究ができないからだ。休日こそ「本当の仕事」である研究に没頭できる。しかし、雑務で溜まったストレスを発散しない限り、アイデアも浮かばないし良い研究もできない。時には何もかも忘れて休日を満喫したいものだ。しかし、意外にそれが難しい。家に居ると何かと仕事をしてしまうし、どこかに出かけても仕事のことが気になってしまう。寝ているときでさえ、仕事で失敗する夢を見る。丸一日、仕事のことを考えずにいられる方法はないものか・・・。

 昨年の10月、サバゲの仲間に勧められロードバイクを購入した。正直気は進まなかった。自分はもう若くはないので、今更こんな趣味を始めても長続きはしないだろう、そう思ったからだ。バイクを買って2週間。いきなり霞ヶ浦を1周する160kmのライドに誘われ、1週間まともに歩けなくなるほど膝を痛めた。「そら見たことか」。自分はバイクを買ったことを後悔した。「大丈夫ですよ、1週間もすれば治っちゃいますから」。サバゲの仲間はそういった。そして本当に治った。今度は140kmを走り、やはり膝を痛めた。次は60km、その次は東京湾を一周して180km。だんだんと体がバイクに馴染んできたのか、その頃にはもう膝は痛くならなくなった。そしていつしかロングライドに魅了され、自ら進んで走るようになった。年末はロードバイクで水戸市の実家まで帰省した。両親も妹たちも仰天していた。連休には銚子まで往復200kmを走った。走行時間は約7時間、平均時速28km/h。まずまずの数字だ。

 なぜ自分はロードバイクにはまったのか。それは、丸一日の間、仕事のことも、人間関係のいざこざも、うまく行かない実験のこともきれいさっぱり忘れることができるからだ。走っている間はひたすら漕ぐことだけを考える。漕ぐことに必死になるからだ。ロードバイクのよいところは、この精神状態を何時間でもキープできること。ジョギングなどと違い、体に掛かる負担がちょうど良いのだ。一日中たった一つのことだけ考えていればよい、という精神状態が実に快適この上ない。脳は十分に休まり、肉体はどんどん引き締まる。ロードバイクを初めてまもなく1年になるが、体重は6kg減り、体脂肪率は14%にまで落ちた。身も心も軽くなった。 柏に居るならロードバイクをやらない手はない。ロングライドに出かけて、身も心も軽くなれば、新しい世界が見えてくると私は信じている。新領域を研究する上で、ロードバイクは私にとって欠かせない趣味だ。

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